NGOの課題

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皆さんもご存知の通りカンボジアには世界中からNGOが集まってそれぞれが様々な理屈を述べて活動しています。また民間以外でも政府系の援助が年間200億円近いですし、日本政府はその中の115億円を税金から支出しています。そういった中でこれらのNGOの中には年間収入が1,000億円にも達する団体もいくつかあります。日本国内ではそういった団体を寄付金で支えるといった文化は一般の民間にまで根付いているとは思っていなかったのですが、日本にもいくつか実在するようです。名もない団体も合わせると日本国内だけでもカンボジアの支援団体の数は200はあるでしょう。明らかに過当競争の状況です。そんな中である団体が少しでも寄付を多く集めたいと考え、「置屋で拷問を受けた女の子を見た」と発言した場合、確かにカンボジアで人権に関した教育が徹底されているとは思いませんので、これを否定できる者もいないでしょう。しかし、あたかもそのような拷問がカンボジア国内で一般的に行われていると紹介したとするなら、それは明らかな事実の歪曲になります。
例えば日本国内でもそういった強制売春といった事例は報告されている訳です。日本の暴力団がアジアの女性たちを風俗産業で働かせるといった中でこのような事件も起こっています。しかし、日本国内で同様の募金を募っても恐らくお金は集まりません。と、言うのも日本国内でもそういうケースは特殊で決して一般的ではないことを私たちは知っています。アメリカの国務省の2008年人身売買報告書によると日本も性的目的の人身売買の可能性がある国と名指しされていますから、あえてその事実を否定するつもりもありません。もっとも、アメリカ軍及びアメリカ人がアジアで一体何をやってきたのかを知る者にとって、こうしたアメリカの政府による報告書はブラック・ジョークです。それはともかく、ではそういった事例は実際にカンボジアで年間何件くらい起こっているのか。仮に年間100件にも満たない、さらに状況が確認できて実際に起訴できるのは30件を切る場合はどうですか。人口が1,300万人のカンボジアの社会にとって、これは一般的なケースだと言えるでしょうか。現在、カンボジアの警察により多くの置屋が頻繁に摘発されておりますし、そこで働く者の中には借金で身動き出来ない者がいる一方で、短期間にお金を稼げる手段として自ら希望して置屋で働く者もおります。そういった中でこうした「拷問」が一般的とまでは言えません。
もちろん例え一人であっても看過できないケースもあります。児童買春です。カンボジアの問題と言えるのかは難しいですが、1986年のベトナムのドイモイ政策との関係で1990年代に一万人以上のベトナムの児童が売られていたという報告があります。現在その多くは成人になっていますし、そういった置屋は既に現地の警察によって摘発されています。また、18歳に満たない者との性交は、例えそれが海外であっても日本に帰国後に逮捕されます。これは当然のことのように思いますが、その一方でカンボジアの人たちは16歳以上を成人と考えていたりしますから、なかなか解決には至らないようです。カンボジアでは高校を卒業するのが16歳であるため、当のカンボジア人自身も自分の年齢を勘違いしている者が少なくありません。偽っている訳ではなく自分の生年月日から満年齢を計算できない方がいるようです。
これと同じようにカンボジアでストリートチルドレンを保護する団体もあるのですが、プノンペンでもそういった子供はあまり見かけません。確かに私も何人かを確認していますが、他のアジア諸国と比べて、ことさらカンボジアが多いという印象はありません。もちろん、こうした子供を保護することは大切なことで、実際に多くの孤児院が運営されているために状況が改善しているということもあるでしょう。しかし、そういった子供たちをカンボジアでは頻繁に見かけると宣伝した場合、やはり誇大広告です。私は基本的にこういった活動を応援したいと思っています。しかし、現在のカンボジアのこうした団体の広告は必ずしも事実を反映してはおりません

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